補助金は目的ではない!新規事業成功のために大切なこと
くどいようだが、補助金がもらえるから新規事業をするのではない。補助金はもらえればラッキーだという感覚であるべきだ。投資金額全額を払い込む勇気と、必ず回収するというロジックを持つことが大事だ。ましてや補助金目当てに新規事業を考え、申請するなんてもっての他だ。
厳しいように聞こえるかもしれないが、本気で新規事業を考え、実行していく事業者には私は寄り添いたい。そして、少しでも投資の支援となるよう、補助金の獲得に向けて共にチャレンジしたい。
本記事では、補助金申請における大項目を時間軸に沿って説明する。
1. 現状の事業の棚卸し:自社の強みを見極める
新規事業を考える際は、まず自社の強みを洗い出すことから始める。なぜなら、成果は強みからしか生まれないからだ。
- 強みを見つけるためには、 WHY SO(なぜそうなのか)→ SO WHAT(だから何が言えるのか) を繰り返す。
- 強みは競争優位性を築くものであり、唯一無二のものである。
- その強みを活かして、 誰のどのような課題を解決できるのか? を考える。
- その市場にどれだけの顧客がいるのかをリサーチする。
また、新規事業には必ず新たな経営資源(ヒト・モノ・カネ)が必要であり、既存事業の資源だけで両利き経営をするのは困難である。さらに、全く違う思考・経営脳が必要になることも認識しておくべきだ。
2. 計画書の作成:事業の地図を描く
新規事業を進めるには、計画書が必要だ。これはまるで山登りの地図のようなものだ。
- 山の頂上(ビジョン) → この事業を展開する大目的は何か?
- 登山ルート(戦略) → どの道を進むのか?
- 登山装備(戦術) → どんな手段を使うのか?
- 予算計画(投資額) → 必要な経費はどのくらいか?
ここまで計画ができれば、「誰に・何を・どこで・いくらで?」というマーケティングミックスの視点が明確になる。
これらは、補助金の申請の有無に関わらず、新規事業をする際には必ず考えるべきことである。
3. 補助金申請のプロセスと注意点
(1) 補助金申請の基本の流れ
補助金申請には、厳格な時間軸がある。以下の流れで進む。
- 申請締切日までに、事業計画書と必要書類を準備し、電子申請する。
- 審査期間(約3ヶ月):採択結果(合格・不合格)が発表される。
- 合格した場合、「交付決定」プロセスが始まる。
- 申請時に提出した投資計画に基づき、見積書を提出。
- 事業再構築補助金の場合、交付決定までに3ヶ月〜6ヶ月かかることもある。
申請から交付決定までに 6ヶ月 ほどかかるため、補助金スケジュールに依存しない事業計画が必要になる。
(2) 交付決定後の補助事業の進行
- 交付決定を受けた後でないと、発注はできない。(発注すると補助対象外になる)
- 自社の希望スケジュールではなく、補助金スケジュールに合わせる必要がある。
- 事業再構築補助金では事前着手が認められるが、新規事業進出補助金では適用されない。
この点をしっかり理解し、補助金を使った事業計画を組むことが重要だ。
4. 補助金を受け取るための実績報告と注意点
(1) 補助事業の終了とは?
- 補助事業の終了とは、「計画していた投資に対する支払いが完了した状態」を指す。
- 事業の終了後、証憑(見積・発注・納品・検収・請求・振込・勘定科目明細など)を提出し、実績報告 を行う。
(2) 実績報告のポイント
- 計画通りに進めることが重要(計画変更は補助金の遅れや不採択リスクを高める)。
- 発注前に業者に必要な証憑を伝える(伝票の書き方や日付の管理も含む)。
- 補助金を受け取るには、ルールに沿った申請と不備のない書類提出が必要。
私はこれまで、事業再構築補助金の差し戻しに苦しんだ多くの経営者を伴走支援してきた。次なる新規事業進出補助金についても、事業者がスムーズに補助金を受け取れるように支援したい。だが、その前に まず計画をしっかり立てることが最優先 だ。
まとめ:補助金は目的ではなく、手段である
新規事業を補助金ありきで考えるのではなく、 「成功するための事業計画」 を先に作ることが重要である。その上で、資金調達の一環として補助金を活用するのが正しい順序だ。
補助金のスケジュールに依存しない事業戦略を持つこと。 事業の本質を見失わず、補助金はあくまでサポートの一部と考えること。
これらの意識を持つことで、事業の成功確率を高め、持続可能な成長へとつなげることができる。
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