毎年この季節が訪れると、大阪を北から南へと貫く大動脈「御堂筋」が、イルミネーションの光で彩られる。その輝きは、都会の喧騒にふと心を和ませ、道行く人々の目を楽しませてくれる。
老いも若きもスマホを構え、足を止めてその光景に見入っている。その姿を見て、気づけば私もいつの間にかその一員になっていた。昼間はどこか殺伐とした印象さえある御堂筋が、この季節の夜は別世界のようにワクワク感に満ち溢れている。
この御堂筋イルミネーションは2009年から始まり、2014年と2015年には「最も多く街路樹にイルミネーションを施した通り」としてギネス世界記録に認定されているとか。その目的は、大阪のシンボルである御堂筋のイチョウをイルミネーションで装飾し、大阪を愛する皆さまに元気や希望を感じてもらうこと。そして、美しい「光のまち」としての景観を創出し、人々を引きつける賑わいづくりを目指している。そんな思いが込められたイベントだと、大阪府のホームページに記されている。
今年は「GrowLight-育てる光」というデザインコンセプトのもと、アートやプロジェクションマッピングなど新しい企画も用意されているそうだ。
私にとって御堂筋は、仕事の移動でよく使う馴染み深い道だ。梅田、淀屋橋、本町と、地下鉄を使ったり、時には歩いたり。その日の状況に応じてさまざまに利用する。急ぎ足で歩く日もあれば、少し余裕を持って景色を楽しむ日もある。御堂筋はそんな私たちの日常の一コマ一コマに寄り添い、支えてくれる存在だ。
この道を行き交う人々を見ていると、それぞれの未来に向かって歩いているように思える。辛そうな表情を浮かべている人もいれば、楽しそうに誰かと笑い合っている人もいる。どんな状況でも、誰もが次の一歩を踏み出し続けている。それは私自身も同じで、「がんばろう」という気持ちを胸に秘めながら、この道を行き交っている。
そんな御堂筋が、この季節になると光に包まれ、まるで未来へ向かうエールを贈っているかのように鮮やかに輝き出す。
今年のテーマ『育てる光』には、未来への希望や成長というメッセージが込められているように思う。どんなに忙しい日々でも、この光が人々に前向きな気持ちを育てるきっかけになる。御堂筋の輝きは、ただの装飾ではなく、一人ひとりの心の中に新しい力を灯してくれる。
「わー、すごくきれい」という声があちらこちらで聞こえてくる。その美しさをSNSで共有し、誰かと分かち合う姿も目に入る。そんな瞬間が重なることで、自然と心が温かくなる。御堂筋イルミネーションは、ただ街を照らす光ではないんだなと改めて思う。
それは、心を癒し、未来を育てる光。少しだけ日常から異空間へと連れて行ってくれる。今年の御堂筋もまた、新しい気づきを与えてくれる特別な光景が広がっている。
だからこそ、足を止めてみたい。立ち止まり、目の前の光景をじっくりと味わう時間を持ってみたい。この季節の御堂筋が放つ光は、未来への力をそっと後押ししてくれる。